日本の税制を考える:税の負担が高所得者優遇になりつつあります。日本の税制はどこに向かっているのでしょうか?

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日本の税制を考える(1) 

日本の税制の基本


 「大増税時代の到来!」でお伝えしたとおり、すでに大増税ははじまっています。日本の財政が厳しい状況であることは事実であり、すべての増税を否定するわけではありませんが、公平な税負担とすべきではないでしょうか。

 日本の租税の前提に「担税力」があります。「担税力」とは、租税を負担する各人の経済的能力のことです。所得が低い人は所得が高い人に比べ、担税力(税負担の能力が低い)と思われます。そのため税率が低くなっています。これを「累進課税制度」と言います。

 「累進課税制度」は、担税力による税負担の公平さを求めたもので、富の再配分も行っています。




政府の税制への考え方


 政府は「抜本的な税制改革」を行おうとしています。しかし、税制改革の全体像、方向性は見えず、増税への布石ばかりが目立ちます。

 政府が税制について語るとき、”誰もが負担する”、”税の空洞化”、”努力が報われる社会を”といったフレーズがよく使われます。何となく聞こえのよいフレーズですが、お金持ちへの負担を軽減して、中・低所得者への課税を強化しようというものです。

 お金持ち優遇、中・低所得者の税負担増の例をいくつか見てみます。





増税・負担増の動き 〔所得税率の見直し 〜所得税率の推移〜〕


 日本の所得税は、課税所得が増えるほど、高い税率を課する累進課税となっています。表1は、所得税の税率構造の推移です。昭和49年は、税率の刻みが19段階に分かれており、所得税の最高税率は75%です。住民税をあわせた最高税率は93%にもなりました。


表1::所得税の税率構造の推移 〔財務省HPより〕

昭和49年 昭和59年 昭和62年 昭和63年 平成元年 平成7年 平成11年 平成19年
万円 万円 万円 万円
税率 10 10.5 10.5 10 10 〜 300 10 〜 330 10 〜 330 5 〜 195
12 12 12 20 20 〜 600 20 〜 900 20 〜 900 10 〜 330
14 14 16 30 30 〜1,000 30 〜1,800 30 〜1,800 20 〜 695
16 17 20 40 40 〜2,000 40 〜3,000 37 1,800〜 23 〜 900
18 21 25 50 50 2,000〜 50 3,000〜 33 〜1,800
21 25 30 60 40 1,800〜
24 30 35
27 35 40
30 40 45
34 45 50
38 50 55
42 55 60
46 60
50 65
55 70
60
65
70
75
住民税の
最高税率
18% 18% 18% 16% 15% 15% 13% 10%
住民税と
合わせた
最高税率
93% 88% 78% 76% 65% 65% 50% 50%
税率の
刻み数
19 15 12 6 5 5 4 6



 1億円の所得があっても、手元に残るのはたったの700万円???...というわけでもありません。実際の手取りは1,500万円程度あります。所得税は、課税所得(収入−経費−控除)に税率を掛けて算出されるもので、収入に対して税率を掛けるわけではありません。

 1億円の所得の人を例にしてみます。
*概算で、税率以外は2006年3月時点を使用します。なお、社会保険料は実際に支払った金額が控除(相殺)されるため考慮しないこととします。


 仮にAさんとします。Aさんを会社員で給与所得のみ、4人家族(扶養家族は3人)とします。会社員には会社員の概算経費として、給与所得控除というものがあります。1000万円超 の収入の場合、(収入−1000万円)×5%+220万円で、 Aさんの場合、約710万円となります。また、収入から差し引かれるものに所得控除があり、約150万(基礎控除+扶養控除×3人)となります。

 つまり、Aさんの収入は1億800万円から給与所得控除などを差し引かれた約1億円が課税されるため、実際の手取りは約1500万円(収入1億800万円−税金9300万円)となります。


 昭和49年の税率を含めた税制を決めた政治は、所得の高い人から低い人への所得の再配分や担税力を考慮し、公平さを考えていたようです。現在にあてはめてみると、時代背景がやや異なっていることもあり、最高税率75%は高いように思えます。

 昭和62年あたりからの政治は違い、最高税率の引き下げや税率のきざみが縮小されています。さまざまな理由付けをしますが、明らかにお金持ち優遇の政策になってきました。平成11年には、最高税率は37%まで引き下げています。この金持ち優遇政策には、国を考えるといったビジョンなどといったものはなく、自分たちの利益しか考えていないように感じられます。



増税・負担増の動き 〔所得税率の見直し 〜平成19年度改正〜〕


 平成19年にはまた所得税率が改正されます。この改正は、最低課税所得を引き下げ、つまり今まで税金がかからなかった低所得者層にも税金をかけ、さらに所得の高い層の税率もあげる、といったものです。

 参考:個人所得税


 お金持ちの税金も上がるから仕方がない、と考えがちですが、単なる所得税の増税です。しかも、低所得者層の方が圧倒的に痛みは大きいです。


 政府の低所得者への課税の理屈として、日本は課税最低限が国際的に高いなどといっておりましたが、決して高いわけではなく、現在では先進国と比べ低い水準になっています(表2:所得税の課税最低限の国際比較 参照)。これをさらに引き下げようとしているのです。



表2:所得税の課税最低限の国際比較(06年1月現在) 〔財務省HPより〕
日本  アメリカ イギリス ドイツ フランス
夫婦子供2人 325 378.5 376.7 508.1 410.7
夫婦子供1人 220 341.2 319.1 403.3 360
夫婦 156.6 190.9 243 257.4 314.1
単身 114.4 95.4 188.7 135.9 212

         ※1ドル=113円、1ポンド=201円、1ユーロ=137 円




増税・負担増の動き 〔所得税率の見直し 〜最低限度の生活とは〜〕


 憲法25条に「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」という条文があります。このため、生活保護という制度があります。

 表3は、平成16年度の生活扶助基準の例です。3人家族で月額約16万円、年額約192万円です。今回の改正は、この水準にあわせたということでしょうか。現実的には、大変厳しい数字です。政府の考える最低限度の生活とはどのレベルを指すのでしょうか。


表3:平成16年度生活扶助基準の例 〔厚生労働省HPより〕
東京都区部等 地方郡部等
標準3人世帯(33歳、29歳、4歳) 162,170円 125,690円
高齢者単身世帯(68歳) 80,820 62,640円
高齢者夫婦世帯(68歳、65歳) 121,940 94,500円
母子世帯(30歳、9歳、3歳) 158,650 122,960円


※ ”国民年金加入のみで年金生活者となった人は、40年加入していても月額6万円強しかもらえない。最低限以下ではないか”と思われた方もいらっしゃるのではないでしょうか。そのとおりです。最低限の生活に満たない年金生活者も生活保護を申請でき、差額を受給できます。しかし、今後このような受給者が急増するとどうなるかはわかりません。その財源のために消費税の引き上げ分を引き当てることは十分に考えられます。








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